黄前久美子が凡人の手の届かない特別になってしまった話
(※このブログは『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』のネタバレを多分に含みます)
名前とブログ名を見れば自明だが、私は高坂麗奈が好きだ。
そして、私と同じように(実際には私が感じた何倍ものを感じただろうが)1期の8話、大吉山で高坂麗奈によって変えられてしまった黄前久美子のことを自らと重ねるように見ていたし、私は「一番なりたいキャラクターは?」と問われたら迷わず「黄前久美子」と答えるような人間だった。
高坂麗奈の特別さを一番近くで感じることが可能で、高坂麗奈の考えによって今まで見ていた視点を思いっきり変えられて生きていくこと以上に幸せなことなど他にあるのだろうかと思っていた。
私にとっての黄前久美子とは「高坂麗奈のことが好きだから、好きにならざるを得ない」という所謂バーター的なキャラクターに過ぎなかった。
ただ、この黄前久美子に自分はなれないなと思う瞬間は過去にも確かにあった。
吉川優子にソロオーディションでの贔屓の疑いをかけられ口論となった高坂麗奈を追いかけて音楽室から飛び出し、「私、間違ってる!?」と高坂麗奈に詰め寄られた後、それまでの態度と一変し強く「思わない」と言い切った瞬間。
高坂麗奈か中世古香織かを選ぶ公開ソロオーディションの場において、立ち上がって真っ直ぐ拍手をしたとき。
上手くなりたいという熱病に侵され、激情とともに宇治橋を駆けたシーン。
1期の頃から既に黄前久美子は魅力的なキャラではあった。
ただ、その魅力はまだ黄前久美子が成長過程にあり、誰かから何かを享受してる状態での魅力だった。ゆえに、視聴者目線としては作中で一番距離の近いキャラであり、見上げるような存在ではなかった。
ここで、映画のパンフレットに載っていた黒沢ともよさんのインタビュー文を引用させてもらう。
作中では「黄前相談所」として、久美子が相談を受けるシーンがありました。ご自身として久美子に相談してみたいことはありますか?
久美子って実はとても身勝手なので、久美子に糧にされるだけな気がしてしまって……あまり相談したくありません(笑)。
そう、黄前久美子はとても身勝手なのだ。
1期、2期と色々なキャラクターと関り、多くの考えや思いを身勝手に自らの血肉として成長した黄前久美子は、いつの間にか見上げなければならない存在と化していた。
そしてとうとう、大吉山の頂上で高坂麗奈が黄前久美子と視聴者に見せた景色と同等かそれ以上の景色を久石奏と視聴者に見せるまでに至ってしまった。
私にはそれが高坂麗奈が見せた景色を超えているように見えてしまった。
精神の礎を高坂麗奈で築き、黄前久美子になって高坂麗奈を見上げていたはずの自分には根っこからひっくり返されるような物凄く大きな衝撃だった。
黄前久美子を最初に変えたのは間違いなく高坂麗奈という存在であり、黄前久美子の人格形成の大部分に高坂麗奈が関わっているのならば、結局高坂麗奈というキャラクターが自分の心を打ったという解釈が出来なくはないかもしれない。
しかし、今回の映画を経て、キャラクターの単体性能として、明らかに黄前久美子が高坂麗奈を上回ってしまった。
黄前久美子も凡人の手に届かない特別になってしまった。
というお話。 着地点 is dead.
高坂麗奈と黄前久美子に順位をつけることはできないのでしませんが、2013年から高坂麗奈を不動のダントツ1位キャラクターと据えていた私にとって、衝撃的過ぎる映画だったので、ブログを書く次第となりました。
ここまで読んでくださりありがとうございました。